暫しの間、あたしたちの間に沈黙が降り立った。
中谷はあたしの作ったご飯を残さず食べ、ビール片手にテレビを見ている。
その横顔に見入ってしまうあたし。
さっきの中谷の笑顔が忘れられずに。
まるで中毒になったかのように、また笑顔を見たいと思う。
中谷は、こんなあたしの気持ちなんて知るはずもない。
沈黙が気まずくて。
だからといって、無理に中谷に話しかける気にもなれず。
「帰るね」
そう立ち上がる。
時計を見ると、既に十二時半。
完全な真夜中だ。
「帰れるのか?」
中谷はテレビを見たまま口を開く。
「失礼ね!
あたし、そんなに酔ってないんだけど……」
「てか、終電」
「歩いて帰れるし!!」
中谷はゆっくりとこっちを見た。
何だか酷く怖い真顔だった。
そして、口を開き……
「あっそ」
と言う。



