あの鉄仮面中谷でも、こんな風に笑うことがあるんだ。
その笑顔を見るのが嬉しくて、さらに身体も熱くなって。
何してるんだろ、そんな気持ちはどこかへ飛んでしまっていた。
「まともなご飯食べてないの?」
そう聞くと、
「自炊、面倒いじゃん」
中谷は当然のように言って、ビールに口を付ける。
そしてそのまま、じろりとあたしに目を向けた。
その視線に固まってしまうあたし。
顔から火を吹きそう!
中谷はビールに口を付けたまま、こう言った。
「これから毎日メシ作りに来い」
「は?冗談やめてよ!」
「俺が栄養失調で死んでもいいのか?」
「あんたに限って死なないでしょ」
そう言うと、よく分かってんじゃんと笑う中谷。
その笑顔が眩しくて。
胸がきゅーっとなって、ご飯作って良かったなんて思えてきて。
あたし、何やってんだろ。
中谷にいいように使われてるだけなのに。
「あんたといると、調子狂うよ」
融通効かない石頭かと思えば、子供みたいに無邪気に笑ったりもして。
中谷の馬鹿!
大馬鹿!!
あんたのせいで……
あんたのこと、気になってしまうじゃん。



