「あの……ご飯……」
おどおど言うと、中谷はテレビを見たまま冷蔵庫を指差す。
どうやら勝手に食べろということらしい。
諦めて立ち上がるあたし。
そして、その冷蔵庫を開けた……
あたしは本当に馬鹿だ。
中谷なんかに構わずに、家に帰ればいいのに。
ここにいても、中谷に馬鹿にされるだけ。
だけど……
帰れなかった。
大嫌いなのに、中谷に磁石のように引きつけられて。
微かに記憶に残る、中谷の体温。
そしてその優しい微笑み。
それは心地よくて温かくて。
今は冷徹な中谷なのに、それを求めてしまう。
「アンタ、すげぇな」
出来上がった料理を見て、中谷は初めてあたしを褒めてくれた。
何だかくすぐったくて嬉しい。
大嫌いな中谷なのに、胸がじーんとする。
テーブルには、急いで作った肉じゃがとサラダ。
そして、煮魚と味噌汁。
我ながら地味な料理だと反省する。
それを食べて、
「マジうめぇ」
顔をくしゃっとして笑う中谷。
あたしはそんな中谷に釘付けになっていた。



