何してるんだろ、あたし。
大声を出して、助けを呼んだらいいのに。
なのに、身体の力が抜けてしまって。
中谷に身を預けている。
中谷はあたしを抱きしめたまま、右手を伸ばしてキーボードを叩く。
そして、Enterを押すと……
画面には、次々と文字が浮かび出す。
どうやらシュミレーションが成功したようだ。
中谷ははじめから分かっていた。
ただ、無能なあたしを泳がせて笑っていた。
なんて酷い男なんだろう。
そんな最悪な男の腕に抱かれ、最悪な男の胸に頬を当てているあたし。
すごくムカつくのに……
こうしていたい。
中谷の腕の中は温かくて落ち着く。
「……行きますか?」
中谷は低い声で静かに言った。



