だけど…… こんな気分のいい時に、決まって地獄に落とされる。 その地獄の大魔王は、あたしたちの背後から静かに近付いていたのだ。 「篠山さん」 その声を聞いた瞬間に、全身を震えが走った。 飛び上がりそうになった。 あたしの背後に気配がする。 あたしは縮こまり、下を向いて震えていた。 「今日、シュミレーションの日でしたよね?」 その声は、いつものように静かで冷たい。 まるで、あたしの胸をぐさぐさ突き刺すよう。 「今日、篠山さんと僕は、必然的に残業になるかと思います」