だけど…… ここにいるのは中谷じゃない! そんな一縷の望みを賭けて、身を乗り出すあたし。 他人の空似であることを確認して、気分よく家に帰りたかった。 奏と呼ばれた人物。 影になっていて見えにくいが、あのトレードマークの眼鏡もしていない。 それに、何だか楽しそうに笑っている。 中谷はこんなふうに笑ったりしない。