「中谷君」
奴はパソコンを打つ手を止め、ゆっくりとあたしを見る。
ドキドキドキドキ……
鼓動がやたら速い。
心臓が凍えてしまいそう。
後輩ごときに何怯えてるんだろ、あたし。
必死でそう言い聞かせたが、今度は寒気がして。
あたしは中谷の作業着を持ったまま、中谷の横で震えていた。
中谷は座ったまま、あたしを見上げる。
あたしと中谷の視線がぶつかった。
初めてマトモに見た中谷。
あたしは、彼に釘付けになっていた。
真面目オーラ全開だったから、全然気付かなかった。
中谷って……
男前だ。
整った眉、
切れ長の瞳、
鼻は筋が通っていて、
唇は少しふっくらしているけど上品で。
思わず後ずさりする。
だが、中谷は相変わらずの仏頂面であたしに言った。
「何ですか?
……特に用がないなら、僕は忙しいので」



