「あたし、まだまだだ」
肩で息をし、弱音を吐いてしまう。
奏は片手でボールを持ち、あたしを見た。
「バスケは自信があったのに、完敗だよ」
悔しい。
あたしは、バスケですら奏に勝てない。
昔は男子に交じってやっていたのに。
不動のキャプテンだったのに。
「上手いよ、十分」
意外な言葉を発する奏。
あたしは、そんな奏をじっと見つめていた。
分厚い眼鏡越しに見える、その切れ長の瞳。
いつもは嫌悪に満ちて冷たく光っているが、今日はなぜかとても優しい。
そんな目であたしを見ないで。
そんなふうに見ると……
諦められなくなる。



