「てか、お前人が良すぎだろ。
何でもハイハイ言うこと聞くのかよ」
人がいなくなった瞬間、これだ。
奏は凶悪モードへと変化する。
だけど無視無視。
あたしには関係ない。
そう思いながら奏に背を向けて、戸締りを始めた。
「海崎さんにはノコノコ着いていこうとするし、雑用押し付けられるし」
「嫌なら帰ればいいじゃん」
あたしは強気だ。
今となってはもうどうでもいい。
奏との関係を終わらせなきゃ。
そのためには、奏に愛想尽かされても嫌われても仕方が無い。
奏は言われるままに帰ると思った。
あたしを置いて。
だが……
ダンッ……
ボールの音がする。
その音につられて見ると、奏が綺麗なフリースローを決めた。
まるでボールが吸い込まれるようにゴールに入る。
軽やかで美しくて、夢中になってしまう。
「1on1。するか?」
あたしは、引き寄せられるように奏に近付いていた。



