「あなたたち、お時間ありますか?」
進行係の人が、あたしと奏に話しかける。
「お時間?
……えっと」
何がしたいのだろう。
面倒なことなら早く帰りたい。
そう思って、また適当に用事を作ろうとした。
だが……
「自分たち、急用が出来てしまって。
あとは戸締りだけなのですが、しておいていただけますか?」
そう言って、体育館の鍵を押し付けられる。
「えっ……あの……」
気付いたらあたしは鍵を持っていて。
彼らはパタパタと体育館から出ていった。
周りはひと気もなくて。
あたしたち二人だけになってしまっていた。
「面倒いな」
小さく奏が呟いた。



