今は海崎さんの優しささえ辛い。
一人で帰ってしょんぼりして、月曜日からまた狂ったように働こう。
そう思ったのに……
「篠山、ご飯行かない?」
海崎さんがあたしを誘ってくれる。
嬉しい。
優しい海崎さんといると元気になる。
だけど……
「すみません。
篠山さん、このあと用事がありますので」
そう言ったのは……
なんと、奏だったのだ。
いつの間にか奏はあたしの後ろにいて。
声を聞いて初めてその存在に気付いたあたしは、飛び上がっていた。
「そうなのか?」
海崎さんは怪訝な顔であたしを見る。
用事なんてない。
海崎さんと、楽しくご飯に行けばいい!
それなのに……
「はい……
残している仕事があるので」
あたしは、愚かな嘘をついていた。
馬鹿なあたし。
何言ってんだろ。
だけど……
嬉しかったんだ、奏の言葉。
例え寂しく一人で帰ることになっても。



