酙は大きな紙袋を奏に渡し、早々に立ち去ろうとした。
そんな酙に、
「もう帰るのか?」
奏は聞く。
信じられない。
あたしには絶対に言わないのに。
むしろ帰れと言われたのに!
酙は少し申し訳なさそうな顔で奏に言った。
「最近色々大変で。
これから練習に行かなきゃ」
「マジか、やべーな。
相変わらず無茶してるな」
「慣れっこだから」
酙はそう言ってあたしをちらりと見る。
酙に見られたあたしは、緊張で身動きが取れなくなる。
そして、会話の内容から実感してしまった。
やっぱり、目の前にいるのは正真正銘のカリスマベーシスト、酙だと。
そんな酙と仲良しの奏。
やっぱり憎い!



