「篠山さん」
奴はにこりともせずに言う。
その視線に刺し殺されてしまいそう。
「無駄話するなら、仕事してもらえませんか?」
く……くっそ……
うなだれて、資料に目を通すあたし。
こんなあたしを心配して、海崎さんは
「ドンマイ」
超爽やかな笑顔で言った。
……そう。
海崎さんにバレるのも怖い。
色恋好きの海崎さん、知ってしまったら、思いっきり首を突っ込んできそう。
そして、次の日にはフロア全体に噂が広がりそうだ。
それに、海崎さんも密かに奏に怯えている。
あたしたちは、暗黙の了解の被害者同盟なのだ。
だから、海崎さんも裏切ることになってしまう。



