「慎吾?あぁ、大学のサークルの友達」




奏は興味なさそうに答えた。

奏にとってはどうでもいいことかもしれないけど、あたしにとっては一大事だったのだ。

どうして冴えない奏が有名グループFの酙と仲良しなのか。

それがずっと気になっていた。





「酙もK大なの!?」




噂には聞いていたけど、酙、超頭いいじゃん!




「すごいな、酙って。

勉強も音楽も頑張ってたんだ」




思わずそう言うと、




「努力家だからな」




珍しく奏が人を褒める。

あたしはそんな奏に見とれていた。




いつもはシャツにスラックス姿だけど、今日は薄い柄のシャツにジーンズ。

ぺたんとしていた髪は、ワックスでふわっとなっていて。

冴えない奏なんて言ったけど、今日の奏はいい男だ。

かっこいい。

会社でもこうしてればいいのに。

どうしてあんなに地味な道を自ら選ぶのだろう。

あたしは、もっと知りたい。

奏のこと、何も知らないから。