ガラッ…… 喫煙所の扉が開いた。 扉の前で、棒のように突っ立っていたあたし。 硬直して動けないあたしの横をするりと通り抜け、どかっと椅子に腰を降ろす奏。 奏を取り巻いていた女子たちは、魂の抜けたあたしを見て、驚いて逃げていった。 まずい。 逃げなきゃ。 そう思うのに動けなかった。 「篠山さん。 立ち聞きとか最低ですよ?」 低い声が聞こえた。