海で散々はしゃいで、夕方。
俺たちは三人で堤防に座り、目の前で滲むように海と混ざっていく夕日を眺めた。
ゆらめく、橙色。
さざ波の音が心地よく耳に入ってくる。
空をかもめが三羽、自由に飛びまわっていた。
ふざけあいながらも、雄大な羽を広げて。
望乃が砂だらけの足をぶらぶらさせて目を細める。
「きれい」
輪が「うん」と微笑んだ。
優しい瞳で微笑んだ。
「なんか…」
「ん?」
「…何でもない」
俺は、口を結ぶ。
胸がざわめく理由を必死でつむぎ出そうとしていた。
何だかすべてがキラキラして見えた。
人を好きになる事の苦しさ、哀しさ、虚しさ、切なさ。
それを語るにはまだ青くさいし、言葉に表す事もできない。
でも――。
「健吾のばかやろーーっ!」
「ばかやろーっ!」
「何で俺だよ!つーか、何で輪まで!?」
「うるさい、いいの!」
望乃が舌を出して笑った。
輪なんか、めずらしく声をあげて笑った。
俺も、笑った。
三人の横顔が、夕日に照らされて、波音が優しく俺たちを包んだ。
潮風が、濡れた髪を撫でる。
俺たちは目を細めて、遠くを見つめていた。
黙って、ただ見つめてた。


