「近頃、聖骨が盗まれる事件が続いているのですってね?」

 不謹慎なのはわかっているのだが、朝の新聞で読んだ事件が自分の身近で起こったと思うとわくわくする。大切な商品をこうぐちゃぐちゃにされたのはとても腹が立つのだが。

「……存じませんな」

 ヘザー警部は、しらを切ろうとした。

「あら、新聞に書いてあったもの。聖骨が盗まれたって」

 無邪気さを装ってエリザベスは問う。むろん、警部はその手にはのらなかった。

「……近頃、賊が横行しているのは事実ですが、すぐにとらえて見せます」

 むっつりとした顔でそう言うと、ヘザー警部はトロワ刑事をふり返った。

 聖骨の盗難は、警察にとっては隠しておきたいことなのかもしれない――そう判断したエリザベスはここで引くことにした。

 そそられた好奇心は、違う方法で解決することにしよう。

「では、現場に捜査員を入れます。現場の調査が終わってから、他に何が盗まれたのか、調べていただけますか」

 ヘザー警部の言葉に、エリザベスはすかさず指示を出す。