「ええと、どちらでお目にかかったかな?」
「叔母のパーティーでお会いしましたわ。叔母はヴァルミア伯爵夫人ですの」
「ああ、レディ・メアリの姪御さんですか。そう言えば一度ご挨拶していますね」
 オルランド公爵は微笑んだ。このパーティー会場にいる面々の大半より少し年長のようだ。たいそう感じのいい微笑みだ。

「エリザベス・マクマリー。マクマリー男爵家当主です」
 口角をあげて、一番可愛らしく見える微笑みを作る。そしてエリザベスは、オルランド公爵に右手を差し出した。
 臆することなく公爵はエリザベスの手を取り、手の甲に軽くキスした。優雅に見える微笑みを浮かべたまま、エリザベスは失礼にならない程度の時間をおいて、そっとその手を抜いた。

「こちらはお友達のアルマ・シャーレー。田舎から出てきていて――リチャードが一緒に今日のパーティーに呼んでくれましたの」
「よ……よろしく……お願い……し……」
 顔を見せないよう、うつむいたままロイはエリザベスと同じように手を差し出す――そしてふらりとオルランド公爵の方へと倒れ込んだ。

「んまあぁぁ! 大変!」
 エリザベスは狼狽した様子をよそおった。最初の悲鳴は少々わざとらしくなってしまたが、オルランド公爵はそれに気づいた様子はなかった。さらに演技を続けながら、エリザベスは続ける。