田んぼしかない。 もちろん高層マンションなんてないし、ゲーセンなんてもってのほかだ。 「よぉ、来たなあ」 駅を抜けると、おじいちゃんが車で迎えに来てくれていた。 「ほら、荷物持っちゃるけん」 爽の荷物をひょいと取る。 「ありがとう」 「ほーら、早よ乗り」 車の窓から見えたのは、やっぱり田んぼ。 もう夕焼けに染まる空がどこまでも続いていた。