気が付いたら私は佐井山君の腕の中にいた。
え…?!
状況がうまく飲み込めなかった。
なんで…なんで…?
なんで私は…抱きしめられてるの…――
「さ…佐井山君…」
幸い、バスには志摩さん以外に、私と佐井山君しかいない。
志摩さんは、前を向いているから私たちの事は見えていない。
「ほんとバカだよ…赤ヶ瀬は」
佐井山君の少し怒った声が頭上から聞こえてきた。
でも、彼の声には温もりがある。
「ごめ…」
謝ろうと顔を上げた時、私の唇と佐井山君の唇が重なった。
「……んっ!?」
重なったと思った唇はすぐに離れ、唇と一緒に佐井山君の体も私から離れた。
佐井山君…なんで…私にキスするの…?
彼女ができたんじゃなかったの?
佐井山君は何も言わず、1番後ろの席に座った。
「…佐井山君」
「…」
「なんで?…なんで私なんかに…」
キス…したの?
「…」
質問に答えてくれるどころか、佐井山君は、目も合わせてくれない。

