「今日は、誰か居るかな?」

 すっかり廃墟と化した建物の壁に、背中を付ける。

 ひんやりとした感覚がし、僕、逢坂遥(アイザカハルカ)は思わず溜め息を漏らした。

 すると……。

「どうかしたの?溜め息なんてついて」

 どこからか、ハスキーな声が聞こえてきた。

「……誰?何処に居るの?」

「君の隣。……多分だけど」

 隣?多分?

「私には君が見えないんだ」

 見えないって、何?

 どうして?

 何処かに居るの?僕には見えないけど……。

「君にも、私は見えていないみたいだね」

 混乱しながらも、口を開く。

「君は、本当に僕の隣に居るの?」

「そうだよ。私は君の隣に居る」

 本来なら、怖いはずなのに、何故か怖さは無かった。

「僕の名前は逢坂遥。君の名前、教えてくれる?」

「勿論。私の名前は、美原依吹(ミハライブキ)。男の子みたいだよね……。でも、女だよ」