家の前にある大きな坂を登って、平坦な道を歩くとすぐ到着する。
この時間は登校するには早すぎるので、私の友達はおろか、他のクラスの同級生でさえ見当たらない。

でも、いつも’’彼”だけはいるんだ。

下駄箱で靴を履き替え、教室の前に到着。
私は深く深呼吸した。

(よし!)

ガラっとドアを開けると、’’彼”の背中が見えた。

「おお!綾瀬じゃん!おはよー。また今日も早えなぁ。」

窓の外を見ていた彼は、こちらに顔を向け私にとびきりの笑顔を向けてくれた。
私は不覚にもどきっとしつつ、

「お、おはよ!私より一条の方が早いじゃん!」

と彼に笑顔を返すように笑った。