玄関に立ったまま顔を強張らせて困惑している茉那と拓馬。
そして、哀しそうな表情を浮かべるカオルさんと薄く唇に苦笑いを浮かべる春陽。
空気を凍らせた当人である奏葉は、玄関で立ちすくむ俺達のことを気にも留めていない。
一人でどんどん階段を上がっていく。
「あ、いつ……」
背中を向けてつんと澄ましている奏葉に文句の一つでも言ってやろうとしたとき、春陽がその場を取り繕うように明るい声を出した。
「とにかく、上がってください。二階に案内しますね」
春陽の一声で、凍ったように止まってしまった時間が再び流れ出す。
「じゃぁ、あとでジュースとお菓子を持って上がるわね」
カオルさんも顔に笑顔を取り戻すと、優しい声音で春陽に言った。



