☆☆☆
退院の日。
会社を休んだ父と春陽、それからあの女が総出で病院に迎えに来てくれた。
わざわざ会社を休む必要はないと強く言ったのに、春陽に因ると父が頑として言うことを聞かなかったらしい。
私は自分が思っている以上に家族に大切に思われてきたことに気付き、身勝手に人を突き放してきた自分が少し恥ずかしかった。
「奏葉ちゃん、荷物これで全部よね?」
退院の手続きを終えて病室を出る直前、頼んでもいないのにあの女が勝手に私の鞄を持ち上げる。
「自分で持つから」
あの女を身体を軽く突き飛ばすように押すと、冷たい声でそう言って彼女の手から鞄をひったくる。
彼女がよろめくのを見て、父が無言でほんの少し眉を顰めたのがわかった。
本当なら厳しい口調で私を諭したいところなのだろうが父は何も言わない。
それをいいことにあの女を無視して歩き出そうとすると、すぐに体制を立て直した彼女が私の鞄をつかみ直した。



