ぼんやりと口を開けて目を瞠る私のに、春陽が必死に説明をする。
「留学のためにパスポートが必要だから、この前市役所に戸籍を貰いに行ったの。そのとき戸籍を見たら、配偶者におかあさんの名前は書いてなかった。パパに問い詰めたら、それはあたし達の為だって」
春陽は私の方に歩み寄ってくると、ぼんやりと立っている私の腕を掴んで揺すった。
「おかあさんのほうが断ったんだって。事実上パパと結婚するけど、籍を入れることはできないって。あたし達の母親はママだから……」
何それ――?
春陽の言葉が意味を成さないリズムのように、頭の中をすり抜けていく。
「お姉ちゃん気付いてる?パパとおかあさんは結婚式だってしてないし、新婚旅行だって行ってないんだよ。それ、全部あたし達のためだったんだよ?」
私達のため――?
頭の中が混乱する。
私は何も言えなかった。



