春陽に腕を引かれた真宏は、私の方をちらちらと気にしながらも彼女に従って階段を降りていった。
階段を降りていく春陽は真宏と腕を組んで、べたべたと彼に引っ付きながら何か話しかけている。
私が苦笑いを浮かべていると、一階の廊下に足をついた春陽が私を振り返った。
そして、挑戦的な目で私を見上げてくる。
それを見て、私は深いため息をついた。
バカみたい――……
ため息をつきながらそう思う。
私は真宏と春陽がリビングに消えていくのを確認すると、夏休みの課題を持って家を出た。
家を出たものの特に行く当てがなかった私は、うろうろと近所を歩き回った挙句、よく行っていた近所のファミレスに落ち着いた。
あの女の夕飯を食べるようになってから、ファミレスを訪れることは少なくなっていたが、店員の佐伯さんはちゃんと私を覚えてくれていた。
「今日は比較的空いてるから、ゆっくりしていっていいよ」
佐伯さんのお言葉に甘えてしばらくそこに居座ることに決めた私は、公園が見下ろせる席を陣取って持ってきた課題をテーブルに広げた。



