「あのさ。き、昨日のことなんだけど……いや、もう今朝か……」
途切れ途切れに話す真宏の言葉を待っていると、バンッと大きな音がして春陽の部屋のドアが開いた。
部屋から出てきた春陽に驚いて、ビクリと肩を震わせる。
春陽が出てくると、その途端に真宏は私に話すのをやめてしまった。
部屋のドアを開いて鉢合わせてしまった私達の間に流れる不穏な空気。
それを最初に切り裂いたのは春陽だった。
「まぁ君、おはよう」
春陽が何事もなかったように、真宏に明るいと笑顔を向ける。
「お、おはよう」
戸惑いながらも、それに答える真宏。
春陽はそのまま真宏の部屋の前まで歩いていくと、彼の腕を組んでにっこりと笑った。
「まぁ君、朝ごはんこれからでしょ?早く下に降りよう」
「あ、あぁ……」
どうやら春陽は今朝の一件で、私を無視することに決め込んだようだった。
にこにこと笑って真宏にだけ話しかける春陽を見て、私は思わず苦笑いする。



