胸の中で、ドロドロとした嫌な気持ちが渦を巻く。
奏葉の肩をつかむ手の甲の傷が、ズキズキと疼く。
俺はもっと奏葉を追い詰めてやりたい気持ちになった。
彼女の口から肯定の言葉を聞けば、自分がもっと嫌な、そしてみじめな気持になることがわかっているのに、口が勝手に動いてしまう。
「どこ行ってたんだよ?蒔田と」
俺は蒔田の名前を、わざとはっきりとゆっくり言った。
蒔田の名前を聞いた奏葉の顔色が変わる。
そして次の瞬間、彼女の口から俺が聞きたくなかった言葉が漏れた。
「どうしてあんたがそんなこと知ってるの?」
奏葉の言葉が、俺の頭中で何度も何度も木霊する。
やっぱり、奏葉はさっきまで蒔田と……
そう思うと、身体がかっと熱くなった。
「付き合ってんの?」
身体中にふつふつと込み上げてくる熱い怒りを何とか抑えながら、低い声で問う。
すると奏葉は眉根を寄せて不愉快そうに俺を見上げた。



