「だから、カオルさんの家に住まわせてもらうことに決めたのは別にカオルさんが“初恋”の相手だからって訳じゃない」
「じゃぁ、他にどんな理由があるんだよ?」
不思議そうな目で見てくる拓馬に、俺はにやりと笑ってみせる。
「もしその連れ子が今もカオルさんのこと悲しませてるんだったら、俺がどうにかしてそいつに分からせてやろうと思って」
「分からせるって?」
「カオルさんの悲しさとか苦しみ全部だよ」
自信満々で胸を叩く俺を見て、拓馬が苦笑する。
「やっぱ、初恋パワーってすげぇ」
教室に入る直前、からかうようにそう言う拓馬を俺は最後に思い切り睨んだ。



