男がヘルメットを奏葉に渡し、彼女がそれを受け取る。
奏葉は男に、はにかんだような柔らかい笑顔でほほ笑みかけていた。
疼くような鈍い痛みが胸を襲う。
その光景を、俺は以前にもどこかで見たような気がした。
誰かにはにかんだような優しい笑みを浮かべる奏葉。
その向かいに立っていた男。
それは――……
俺はその光景をリアルに思い出すとともに、そのときと同じように奏葉の前に立って笑っていた男の名前を思い出した。
蒔田 光輝。
学年でも成績が優秀だと評判で、奏葉のクラスの委員長。
「なんで……」
奏葉は蒔田といくつか言葉を交わしたあと、ヘルメットをかぶって彼のバイクの後ろに乗った。
蒔田は奏葉が乗るのを確認すると、バイクを発進させる。
バイクが走り出すと同時に、奏葉が蒔田の背中にしがみつく。



