「カオルさん、二年前に結婚しただろ?その相手、カオルさんより十歳近く年上なんだ」
「あぁ、言ってたな」
俺の言葉に拓馬が頷く。
「その相手、再婚でさ。連れ子が確か二人いたんだよ。俺らと同じくらいの」
「うん」
「カオルさん、その連れ子の一人と上手くいってないみたいなんだよな。一年ぐらい前かな?俺の家に遊びに来たカオルさんが母さんにこぼしてた」
母さんと話しこむ、その時のカオルさんの横顔を思い出す。
淋しそうな、悲しそうな……
でもどこか悔しそうなカオルさんの横顔。
「その連れ子に気を遣ってか、カオルさん、結婚式も挙げてないみたいでさ」
「え?そうなんだ?」
拓馬が驚いた顔をする。
二年前、カオルさんが結婚すると聞いたときはショックだった。
カオルさんよりも十歳近く年下の俺は、彼女の“何か”になることなんてもうすっかり諦めていたけれど。
やっぱりショックだった。
だけど、カオルさんが幸せになるように願った。
それなのに、カオルさんは結婚式を挙げることもできずに結婚相手の連れ子に悩まされている。
それを知った俺は、結婚相手とカオルさんを悲しませているその連れ子のことを恨んだ。
カオルさんは初恋の人だから、無性に心配だった。



