「それでね、そういうことがあってから、あたし真宏のこと好きなんだ。真宏がこの高校受験するって聞いて、あたしも頑張って勉強してこの高校受けたの」
茉那が頬を赤らめながら、今度は恥ずかしそうな顔で俯く。
「へぇ」
私は今度は、半ば呆れた目で茉那の横顔を見ながら気のない返事をした。
茉那はあの茶髪の男が好きなのか。
茉那からそういう話を聞くのは初めてだった。
まぁ、そういうことならせいぜい頑張ってくれればいい。
誰かを“好き”になるなんて、私には縁のない話だ。
“好き”なんてそんな移り気で曖昧な言葉に踊らされるなんて真っ平だ。
私がそんな風に思っているとは知らない茉那は、私の横を歩きながら教室に着くまでずっと一人で高野 真宏のどこがいいかを語り続けていた。
頬をピンクに染めながら、大きな目で私を見上げて彼について話す茉那。
だけど、茉那はそれでいいのだと思う。
茉那は、“好き”という言葉に踊らされながら可愛い恋をすればいい。
茉那にはそれが似合うと、私はそう思った。



