「そわ、悪かったって。そんな怒らず、メシはちゃんと食えよ」
そう言いながらも真宏はまだ笑い足りないのか、私を見て小刻みに肩を震わせていた。
その姿を見ると、ますます腹が立つ。
「いらないって!」
私は苛立ち紛れに、真宏が手にしていた弁当の袋を払いのけた。
真宏の手から弁当袋が離れ、玄関の床に落ちる。
落ちた衝撃で弁当の蓋が開いたのか、おかずが床に散らばり、弁当袋におかずの染みがじわじわと広がっていった。
「あ」
真宏とあの女が息を飲む音が聞こえる。
無残に床に散らばった弁当の残骸に、私は少し罪悪感を感じた。
思わず払いのけてしまったが、ここまでするつもりはなかった。
私は悲しそうな目をするあの女の横顔が見えないように視線を反らした。
「そわ!お前、なんてことするんだよ?」
真宏の声が私を責める。
だが、あの女は玄関の床にしゃがみ込むと散らばった弁当を無言で拾い集めた。



