その匂いを嗅いだ私の腹が、勝手にぎゅるると音をたてて鳴る。
その音は玄関中に響いて、私は恥ずかしさのあまり頬が熱くなるのを感じた。
一度音を立て始めるとなかなか鳴り止まない腹の虫を、両手で必死に押さえる。
「ぷっ……」
傍に立っていた真宏が私を見て吹き出した。
「そわ。お前、ほんとはすげぇ腹減ってんじゃん」
私の腹の虫があまりに大きな音を立て続けるので、真宏はついに腹を抱えて笑い始めた。
「まぁ君、ちょっと……」
私達の後ろで困ったような声を出すあの女。
でもその声はやや震えていて、今にも笑い出しそうなのを堪えているのがわかる。
朝から腹が立つ。
私は顔を真っ赤にしながら、あの女と真宏のことを睨んだ。
「お弁当なんていらない!お腹だって、別に減ってるわけじゃない!」
不機嫌な声でそう叫ぶと、真宏が顔を上げて私を見た。



