「平気だよ。もう過ぎたことだし」
首を何度も横に振った後、茉那は私を見上げてにっこりと笑った。
その笑顔が何だか痛々しくて、私の胸をほんの少し痛める。
「真宏とはね、中三の時初めて同じクラスになったの。真宏、あたしが教室でクラスメイトの女子達から悪口言われてるときに助けてくれたの。あたしのことよく知りもしないのに、『つまんないことやめろよ!』って言ってくれた。それから、クラスメイトの女子達から悪口言われたりすることはなくなって……だから、恩人なんだ」
「へぇ」
「拓馬くんは真宏の友達で、あたしがクラスに溶け込むまで真宏と一緒にあたしのこと庇ってくれた」
私は茉那の言葉を聞いて、さっき見た二人をちょっとだけ見直した。
私の会釈を無視したことは、水に流してやろう。
心の中でそう思う。
「それでね……」
私が二人の男子生徒をちょっとだけ見直していると、茉那が突然頬を赤らめながら小さな声で言った。



