「ごめん、奏葉」
駆け戻ってきた茉那に無邪気な笑顔で見上げられ、男子生徒二人に抱いた不快な気分が萎える。
「いいけど。あの二人、誰?」
私が尋ねると、茉那は笑顔のまま嬉しそうな声で言った。
「高野 真宏(タカノ マヒロ)くんと、森宮 拓馬(モリミヤ タクマ)くんだよ。二人とも、中学校が一緒だったの」
「へぇ。仲良かったの?」
私の問いかけに、茉那がほんの少し表情を曇らせる。
「仲良かったというか……真宏は恩人なんだ」
真宏というのが、茶髪の方の男子か。
ぼんやりとそんな事を考えていると、茉那が俯きながら言った。
「あたし、中学でも同じようにクラスメイトから嫌われてて、中一、中二とずっと浮いてて友達いなかったんだ」
茉那の言葉にはっとする。
隣を歩く彼女は俯いたままで、その表情は窺い知れない。
でも、きっと淋しそうな目をしているだろうということが私には分かった。
「茉那……?言いたくなかったら別に……」
茉那の口からその続きを言わせまいとする私を、彼女自身が首を横に振って静止する。



