「いや、海外勤務って言っても三年の期間限定。どうせ大学入ったら一人暮らしする予定だったし、それがちょっと早まったかなぁくらいに思ってたんだけど、親が急に高校生の間はやっぱり心配だ、とか言い始めて。つい最近になって、高校卒業するまでは親戚の家に居候させてもらうことに決まったんだ」
「そうなんだ」
茶髪の男子の言葉に、茉那がほっとしたような声でそう言った。
「ところで茉那、お前ちゃんとクラスでやっていけてんの?」
彼が茉那に尋ねる。
その言葉を聞いて、いまひとつよく飲み込めないが、彼と茉那とはよっぽど親しい間柄なのだということだけは分かった。
「うん。一年生のときに友達になった子がいてね、その子が二年生になっても同じクラスなんだ」
茉那がそう言って、私の方を振り返る。
茉那が振り返ると同時に、茶髪の男子とその隣に立つ男子の二人と遠目に目が合った。
戸惑いつつ私が小さく会釈すると、二人は何の反応も示さないまま茉那の方に再び視線を向けた。
無視……?
彼らの態度に一人気分を害していると、それに気付いていない茉那は彼らと何言が話して、それから私の方に駆け戻ってきた。



