「おぅ茉那」
「ひさしぶりじゃん」
二人の男子生徒が交互に言う。
「お前、もう高二になったのに相変わらずチビだな」
茶髪の方の男子がそう言いながら茉那の頭をぐしゃぐしゃに撫でるのが見えた。
「もう、真宏!やめてよ!」
茉那は頭に置かれた手を払いながら、それでも少し嬉しそうな様子で頬を膨らませている。
「それより、真宏が始業前にちゃんと登校してきてるのってめずらしくない?遅刻常習犯なのに」
「だよな」
茉那の言葉に、茶髪じゃない方の男子が笑う。
「別に常習じゃねぇから」
茶髪の男子は隣で笑う友人を軽く叩いて睨んだ。
「うちの親父が急に海外勤務になってさ、今家の中がバタバタしてんの。それで家でゆっくり寝てる雰囲気でもないから」
「え?お父さんが海外って……真宏、転校するの?」
茉那の不安気な声がする。



