「あっ!」
そんな私の胸のうちにちっとも気付いていない茉那は、何を見つけたのか突然大きな声を上げて私を追い越して走り出した。
不思議に思って茉那の背中を目で追っていると、彼女が数メートル先を歩いている男子生徒二人の肩を叩き、親しそうに彼らの名前を呼んだ。
「真宏(マヒロ)!それから拓馬(タクマ)くんも。おはよう」
この学校で、茉那が私以外の誰かに話しかけているところをほとんど見たことがない。
遠目で顔まではよく見えないが、二人とも少し長めの髪をワックスで遊ばせるように立たせて似たような格好をしている。
二人のうち一人は赤っぽい茶髪だった。
私達が通う進学校で髪を染めている生徒も珍しい。
茉那とこの二人はどういう関係なんだろう。
ますます不思議に思ってみていると、男子生徒二人が振り返って茉那を見下ろした。



