きらいだったはずなのに!


 数メートル開いていた距離を詰めるように、一歩ずつ悠斗はこっちに歩み寄ってくる。


 あたしは、その場から動けなかった。


 真っ直ぐあたしを見るその目には見覚えがありすぎて、蓋をしたはずのあの時の苦い記憶がまた蘇りそうになる。


 来ないで、と思うのに、もっと近くで悠斗の姿を見たいと思った。


 いやな思い出を作った悠斗のことは、好きじゃないなんて遠まわしな言葉で表したくもないくらい、きらいだけど。


 それでも、久しぶりに正面からその顔を見て、風貌はすっかり変わってしまっていても、あたしが好きだった悠斗の面影はちゃんとそこにある。


 一歩ずつ踏みしめるように歩く靴と地面の擦れる音だけがあたしの耳に響いて聞こえて、周りの雑音は全てシャットアウトされたみたいだった。


「……元気にしてた?」


 あたしの目の前に立った悠斗。


 クリアな声が、大好きだった声が、ゆっくりと耳に浸透していくみたいだった。


 あの頃とは違う、少し長めの派手な金髪。


 右耳にはきらりと光るピアスがひとつ。


 左目尻の泣きぼくろは健在だ。


 でも、その下には小さな傷跡があった。


 身長は、少し見ない間にだいぶ伸びたみたい。


 爽やかで見た目優等生だった中学生の頃とはかけ離れたその姿は、まるでどっかのチャラ男かヤンキーを思わせる風貌で。


 だけど、話し方が落ち着いている。


 いつの間に、大人びたんだろう。


 そして、下品にならない程度に浅く履いている制服のズボン。


 それは、あたしがミヤコちゃんと出会うまで、第一志望としていた高校のものだった。