それに反応して、足をぴたりと止めた。
「茉菜……?」
ミヤコちゃんがあたしを呼ぶ声は、耳をスーっと抜けていった。
だって、それに反応する余裕なんて今のあたしにはない。
「茉菜、だろ?」
振り向かないあたしを本人だと確かめるかのように、一文字ずつはっきりと発せられたのは紛れもなくあたしの名前で。
久しぶりに聞いたその声を、聞き間違えることはない。
だって、中学生の頃よく聞いていたから。
少し低めの、だけどよく通る声。
あたしの後ろ、ほんの数メートル先でそれは聞こえた。
それと同時に、中学生の時の記憶がフラッシュバックした。
『あ、茉菜? 付き合ってるっつーか……。どっちにしろあんな女やめとけよ! バカだし~! バカがうつっちまうぞ!』
そう言って、ゲラゲラと笑う声までも、鮮明に蘇った。
心臓がいやな音を立てて鳴っている。
ぎゅっと握り締めた手に汗が滲んだ。
どうして、こんなところで会っちゃうんだろうな。
中学の時、狭い校内で会うことがないように避け続けて、高校だって……。
「茉菜、知り合いなの?」
微動だにせず突っ立ったままのあたしに、小さな声で囁くように言ったミヤコちゃん。
その言葉で、意識が現実に引き戻された。



