きらいだったはずなのに!


 グレーのスーツをピシッと着こなして、ワイシャツの袖をまくっている後ろ姿。


 ここ最近で見慣れた彼、桐島さんがそこにいた。


 ……女の人と、腕を絡ませて。


「桐島さんだ……」 


「え、なに。どれ?」


「あれ」


 そう言って、あたしたちの先を歩いていく桐島さんを指さした。


 よそ行き顔で爽やかに笑う彼を見たミヤコちゃんは、「ふーん、茉菜が言ってた通りかっこいいけど。裏ありそうな顔してるよね」なんて彼を批判した。


 彼の隣りにいる女の人は、腰まであるきれいにウェーブした茶色の髪を揺らしながら、桐島さんを見上げて楽しそうに笑っている。


 見た感じ、美人っぽそうな人。


 スタイルもいいし、正直言って絵になるほどふたりはお似合いに見える。


 女の人に、桐島さんも優しく笑い返していて。


 なんだ、なんだ。


 あんなに口悪いし暴力的なのに、彼女いるんですね。


 まあ、あれだよ、顔だけはかっこいいもんね?


 彼女がいてもおかしくない。


 あたしには全く関係ないし。


 だけど、なんでだろう。


 すごくもやもやするんだけど。