きらいだったはずなのに!


 帰る桐島さんを見送りに玄関まで出る。


 いつもはそこまでだけど、今日はどうしても姿が見えなくなる最後まで見送りたくて、コートを羽織って一緒に外に出た。


 真っ暗な中、街頭に照らされた雪が光って見える。


 お互いの吐いた息が白く染まって、空気に溶けて消えていった。


「……桐島さん。今日は、その、ありがとうございました」


 今日から彼氏と彼女なんだ。


 その事実に心は浮足経つ。


「おー」


 短いたった一言の返事でさえ、いままでと違って特別に聞こえるから不思議だ。


 照れたように顔をそむけた桐島さんが少しだけ子供っぽくて、かわいい。