「減らず口きくのはこの口か?」
そう言ってこっちに長い腕を伸ばしてきたかと思うと、その大きな手はあっという間にあたしのほっぺを摘まんでくる。
「いひゃいです!」
きっと好きになる前にこんなことされてたら、セクハラだのなんだの言って騒いでたんだろうな。
でもいまは、たったこれだけのことが嬉しく感じるんだ。
「……これでもいろいろ心配してんだよ、おまえのこと」
そう見えないかもしれないけどさ、なんて桐島さんは吐き捨てるように言う。
二十時半を過ぎて、あと三十分で桐島さんとの時間は終わりを告げる。
なんとなく久しぶりにゆるい空気感になって、お喋りのチャンスだと思いこれまで言わずにいたことを初めて口に出した。



