「あの、言いそびれてたんですけど。今日は本当にありがとうございました……!」
「まだ来たばっかなのに、帰る時の挨拶みたいな言い方じゃん」
「いや、違うくて! 噛みしめてるんですよ、もうすでに楽しくて!」
「ふーん、そっか。それはなによりですよ」
そう言って桐島さんは、また犬を撫でまわすみたいにあたしの頭を撫でる。
もっと前だったら、犬扱いしないでってたぶん怒ってた。
……けど、いまは怒る気になれないな。
犬扱いでも嬉しいんだもん。
もうそう思えるくらい、あたしはこの人のことが好きなんだ。
あたしがそんな思いを秘めてることなんて、きっと隣りにいるこの人は気付きもしないんだろう。
けれど、あたしを撫でる時の手つきとかあたしを見る目が優しくて、勘違いしそうになっちゃう。
……あたしは、犬に似てるだけ。
そう自分に言い聞かせて、桐島さんを見つめた。
そんなあたしたちの様子を悠斗がどんな表情で見ていたのか、あたしは知るはずもないけれど、痛いくらいに刺さる視線だけは背中に感じ取っていた。



