きらいだったはずなのに!


「茉菜、兄ちゃんのこと好きなの?」


 遠ざかる背中を見送って余韻に浸っていると、隣りから聞こえた不躾なその声にギクッとした。


 その声の正体は言わずもがな悠斗なんだけど、その声の冷たさに嫌な汗が背中を伝っていく。


 悠斗の方へ視線を移すと、声とは裏腹に表情はひどく寂しげだった。


「……好きじゃ、ないよ」


 なんとか振り絞って、それだけ言った。


 悠斗の言葉通り、あたしの心の中には桐島さんがいる。それは事実だ。


 けれど、正直困ってる。


 今日悠斗と会って過去は清算したつもり。


 中学の時に悠斗に言われたことも、告白されたことも、一応自分なりに受け止めて。


 悠斗はあたしのことを忘れられなかったと言った。


 ……あたしも、忘れられなかった。


 あれから一度も伸ばすことさえしなかったこの短い髪のままでいることが何よりの証拠だと思う。