「今日土曜日ですよ? 桐島さんの曜日感覚、どこにいっちゃったんですか?」
「ばーか。昨日渡そうと思ってた夏休み期間中の指導計画書忘れてたから、今日持ってきただけ。月曜までに見ておいて」
ニシシ、と小ばかにしたように笑うあたしに、桐島さんは一枚のプリントを手渡してきたので、それを両手で受け取った。
「なあんだ。間違えて来たんだと思って、からかう気満々だったのに」
「アホか。おまえと違って俺がそんなミスするわけない」
「ひっど!」
バカにされているのに、こんな軽口でさえ楽しいなと思う。
……そうだよね。恋って、こんな感じだった。
なんでもない会話が楽しくて、会えると嬉しくて。
次会えるのはいつかなって考えて、ふとしたときにその人の顔が思い浮かぶ。
ちょっとのことでドキドキしたりして。
悠斗に似ているからきらいだと、いままであたしの心にはストッパーがかかっていたんだと思う。
けれどこうして今日悠斗と話して、聞きたかったことを知れて、あたしの中からはもうあの頃のトラウマが消えていた。
さっき告白されたばかりなのに、悠斗に悪いとは思う、けれど。
……あたしは、きっと桐島さんが好きなんだ。