11月になってすぐ…

マユキがF(県)に出発する日が来た。



「別れて来た。

アイツ…
いきなりフラれて、(住んでた家の)鍵返されて…

すごく…っ…」

言葉に詰まって、顔を覆うマユキ。


アタシは、ただ黙って抱きしめた。



色んな思い出や歴史が、
今はまだ辛いけど…

きっとここから、ほんとの幸せに向かってくんだ。



頑張れ、マユキ…






新幹線に向かうタクシーの中で…

「これ、使って…」

鍵を渡された。


「智和んトコに行くって決める前に、
施設長に家の事相談してたら、勝手に借りてくれてて…

勿体ないから、咲陽使ってくれない?」



マジかよ…!

「いーのか!?」


「…

いーから渡してんでしょ?
施設長にも、話通してるから」


「ありがと!マユキっ」

すげぇ助かる!!


抱きつくアタシに、複雑な顔。

「なんだよ?…」


「…

やっぱり、ヨーコさんに頼んでなかったんだ?」



あ…

「これから頼むトコだったんだよ…」


「まったく…」

情けなさそうな微笑みを浮かべる。