金曜日、今日はきっと太田さんが来る。
そう思うと、朝からソワソワ…
「瞳子さん?聞いてますか?」
「え、あ、ごめんなさい…」
「もうっ、さっきからソワソワし過ぎですよ…」
「ですよね…」
「先にお昼いただきますね」
「はい、どうぞ」
やっぱり、私緊張してる…
昨日のこと思い出したら…
顔が赤くなってくる…
そうこうしているうちに、時間はどんどん進み、太田さんが来る時間が近づいていた。
私、逃げちゃだめ!カウンターにいなきゃ。
「顔が硬いですよ」
「そ、そうですか?」
「18時50分ですね」
すると、入り口の自動ドアが開いた。
太田さんは、真っ直ぐ私の前に来て、ニコリと笑ってくれた。
その笑顔に私はまた、胸の中がザワザワしてしまった。
「宗輔さん、よかったですね」
「本当によかったよ」
「お二人ともいい顔されてますよ」
櫻子さんにそう言われると、お互い目が合い、すぐに逸らした。
「警察からの連絡はあった?」
「いいえまだなんです」
「そっか…早く捕まってくれたらいいのにな…」
薗田さんのことを思い出すと、複雑な思いが湧いて来る。
騙されてたのに、お母さんのことだけは、本当じゃないのかな?
なんて思ってしまう…
太田さんは、いつも通りに本を借りて帰って行った。