「なんのお構いも出来なくて、すみません…」


私は、お茶を出しながら言った。


「大したもんだよ。瞳子ちゃん。富ちゃん良い孫を持ったな!」


「そうなんだよ。お、宗輔くん、瞳子を嫁にどうだ?」


「おお!富ちゃんそれはいいアイディアだよ!」


「「…」」


何を言い出すんだ…この二人は…


太田さんには、彼女がいるんだって!


「あとは、当の本人同士の気持ち次第だな」


「元ちゃんとワシはいつでも歓迎だからな」


「…」


一瞬、太田さんと目が合ったけど、すぐに私から逸らしてしまった。


「さっ!富ちゃん始めようか」


「そうだな。今日は、将棋かな?」


「そうしよう」


私は、逃げるようにキッチンに行った。


すると、太田さんも後をつけるようにキッチンに来た。


「ごめんなさい」


太田さんはいきなり頭を下げて謝ってきた。


「え?」


「有紗が、あっ、彼女が平手打ちしたって聞いて、本当に申し訳ないことをしたと思って…」


「見ての通りもう治っているので、大丈夫です」


「けど、顔に…傷が残ったら、取り返しが効かないよ…」


「本当に私たち、謝りあってばかりですね」


そして太田さんは、キッチンにある椅子に座った。


私は、立ったまま太田さんに質問した。


「ところで、何しにうちに?」


「ああ、富一郎さんに挨拶に」


「どうして、祖父に?」


「富一郎さん、うちの会社の株主なんだ」


「そうなんだ、知らなかった…」


「小さい頃から富一郎さん、よくうちにも、ああやって、将棋とか囲碁とかしに来てたんだ」


「じゃあ、お互いを行き来してたんですね。うちにも元さん来てますし」


「うち、祖母も母も早くに亡くしてるから、ツルさんもよく来てくれてた」


「そうなんだ、それも知らなかった」


「ところで、こないだの俺の忠告聞いてくれた?」


「え?」


忘れようと思っていた、薗田さんのこと…


思い出してしまった…


太田さんの忠告聞けなかった…